2025年9月、SPPは中部国際空港と老舗「山本屋」、そしてフィリピンのシェフ協会 LTB Philippines Chefs Association とともに、マニラ・マカティのレストラン IKOMAI で発酵食文化の体験イベントを開催しました。名古屋の味噌煮込みうどんを中心に、中部地方の発酵調味料を実際に使いながら、地域の味をシェフたちと一緒に体感する時間になりました。

今回のイベントは、同時期にBGCの三越で開催された「発酵食品フェア」と連動。まるや八丁味噌(愛知県岡崎市)、九重味醂(愛知県碧南市)、山川醸造(岐阜県岐阜市) といった中部を代表するメーカーの商品が実際に販売されるタイミングに合わせて実施されました。イベントで体験した発酵食品をそのまま現地で購入できることで、味の体験と生活の接点をつなぐことを目指しました。
味噌煮込みうどんを“つくる”体験から

イベントの前半は、山本屋の職人による味噌煮込みうどんのデモンストレーションと体験。参加したフィリピンのシェフたちは、生地をこね、のばし、切る工程を実際に手を動かしながら学びました。使用された味噌は、まるや八丁味噌。濃厚で深みのある味わいが特徴で、煮込むほどに旨味が広がります。鍋から立ちのぼる香りに、会場が少しずつ静まり、真剣な眼差しと笑い声が交錯しました。こんなにリラックスして行われる日本食のワークショップは珍しい、と多くのシェフが口をそろえていました。質問や意見が自然に飛び交い、学びと交流が同時に進んでいく時間に。
発酵調味料の“ききくらべ”

うどんの体験のあとは、愛知・岐阜を代表する発酵調味料をテイスティング。山川醸造のたまり醤油と白醤油、九重味醂の味醂、そして日本酒を実際に味わい、それぞれの香りや旨味の違いを確かめました。
「刺身を白醤油で食べたのは初めて。一番おいしいかも!」
「味噌の風味が、フィリピンの料理にも合いそう!」
そんな声が自然にこぼれ、テーブルの上で文化がゆるやかに交わっていきました。
イベント後半では、前日から IKOMAIのシェフチームと山本屋の職人が仕込んだコラボメニュー が登場。たまり醤油や味醂を使った Adobo(アドボ)、味噌を加えた Sinigang(シニガン) など、発酵調味料をフィリピン料理にアレンジしたメニューが次々に並びました。さらに、手打ちした味噌煮込みうどんや、白醤油を添えた刺身、名古屋名物の手羽先など、“発酵の味”をさまざまなかたちで楽しめる構成に。どの皿にも発酵の深みと現地の食文化が自然に溶け合い、参加したシェフたちはその可能性を口々に語っていました。
現地のシェフたちと生まれた交流

参加したLTBシェフ協会の14名はもちろん、飲食・ライフスタイル系メディアの参加者も多く、会場は終始フレンドリーで前向きな空気に包まれました。学びながら楽しむスタイルが好評で、「地域の食文化を知ることは、料理の引き出しを広げること」——そんな言葉が印象的に残るイベントでした。
SPPの視点から

SPPでは、食と文化を軸に、地域と海外をつなぐ活動を続けています。今回のマニラでの取り組みは、“発酵”をテーマに、名古屋・中部の味をより身近に感じてもらう試みでした。技術と地域の知恵だけでなく、シェフとの交流を通して海外の現場で直接伝える。そんな“手渡すような食の交流”を、これからも続けていきます!
開催日: 2025年9月16日(火)
会場: IKOMAI(Salcedo, Makati)
主催: 中部国際空港株式会社
協力: 有限会社山本屋総本家、SPP株式会社
参加: LTB Philippines Chefs Association、現地メディア各社